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あめんちあ

あめんちあ

富ノ沢 麟太郎

「改造」1911(明治44)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页

青空文庫

そうしてそのことのみをその一本の手紙のなかに口やかましく繰返していた。

彼自身にとって必要なことは何一つ書いてなかったと言えるほどであった。

こんなことになったのも、美角夫人からの手廻しであろうと、彼は不快になって後悔した。

母親は彼が何事もせずに、我儘勝手に歩き暮していると考えている。

そうして彼女の考えに間違いはないのであった。

ところで、その用もなくぶらぶらと歩き廻ることは、この機会を利用して止めてほしいというのであった。

彼自身としても、こう言われるまでもなく、一日一日と遊び暮していることは、退屈であるばかりでなく、更に心苦しいことであるから、このことを思う瞬間からでもすぐ止めてみたい、そうして学校へも出席してみたい。

と、彼は願っている。

しかし彼はこう自分自身へ願っただけでどうにもならなかった。

そうしていつのころからか、彼は彼自身へ向って一種の好奇心を抱くようになっていた。

いまのところ、彼は彼自身へは分相応のつとめをつくしていると考えているのであった。

先ず彼は学校へ出席してみたいと願った。

しかし彼はすでに学校の方は放校されていた。

彼はこのことを思い出しはするのであったが、未だに学校には籍があるような気がしてならなかった。