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あめんちあ

あめんちあ

富ノ沢 麟太郎

「改造」1911(明治44)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页

青空文庫

ところが彼には古本屋の主人の言うことが一一癪に触った。

本屋は流行の本ででもなければ価値がないと思い込んでいる。

この売れゆきのことは別としても、書物を手に持ったか持たぬさきに、直ぐ無造作にそれを投げ出す本屋のしうちに、彼は腹をたてた。

彼は内心怒った。

彼にはその様子が見ていられなかった。

ちょうどそれは指一本ずつ切って捨てられるような苦痛であった。

それに三十前後のその主人は、一ことごとに変に語尾を長く引きながら、へ、へ、へと笑う。

その笑いを飲料物のように飲みこんでから、にやりと顔全体で笑う。

反古紙のような顔。

彼はその顔に嫌悪を催した。

大方はこんなことで彼は一切その申出を受けつけなかった。

そうして彼は肉眼には見えないものの声に耳を傾けた。

「君はおれを忘れたのか――

「それは忘恩というものだ――

「おれは十分君を憎む――

「それはおれを愚弄したことになる罰だ――

「おれは十分君を憎む――

「おれは冷たい吹息を吹きかけられたところで、決して曇るようなものでないからね……ま、君の燃えかけた蝋燭のような心を憎む――

「おれは懇願するのではない――

「君の態度はよくないと忠言する――