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あるおんせんのゆらい

ある温泉の由来

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页

青空文庫

「僕のところも知っています」

その日から僕達は胸襟を開いた。行きも帰りも一緒だった。毎朝、早川君が待っていてくれる

「君、西引佐と東引佐は何故仲が悪いんだろうね?」

と早川君が問題に触れた。

「僕、本当に厭になってしまう」

「恥だよ、両方の村の」

「僕の方の小学校の校長先生も始終そう言っている。これは何とかしなければいけないって」

「僕の親父もそう言っているんだ。これは中学校へ行っているものがお手本を示す外に仕方がなかろうって」

「成程」

「君と僕が仲よくすれば、皆見ているから、それが教育になる」

「二人で村の為めに尽そう」

「約束して置こうよ」

「うむ」

それから間もないことだった。僕達は模範にも教育にもならなかった。却って意外の結果を見た。或日、学校の帰りに草刈り小僧達の取り巻くところとなったのである。皆小若い衆だから、中学一年生よりも大きい。

「早川の坊っちゃんでも、目に余れば堪忍ならない」

と一人が言った。一番柄の悪い奴で、大将らしかった。

「何だい?」

「早川の坊っちゃんだから、尚お勘弁が出来ない。坊っちゃんは村で大切の人になるんだから」

ともう一人、図体の巨いのが進み寄った。