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あるおんせんのゆらい
ある温泉の由来
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页
馬の合う中学生二人
多勢に無勢だから無茶は出来ない。
こういうことを書き立てると、毎日喧嘩をしているようだけれど、必ずしもそうでない。曲り始めると曲るので、一向事件のない平和な月が続くこともある。尚お伝統は伝統として、個人関係は格別だ。現に僕の親類には西から嫁を貰っているのがある。兵隊に行っている間に同年兵の西の男と刎頸の交を結んで、その妹と縁談が纒まったのである。嫁の遣り取りは稀でない。東から西へ養子に行っているのさえある。兎に角、こういう連中が一種の先覚者だ。東西引佐は何も仇同志でないから、他の村と同じように仲を好くしなければいけないと主張している。
馬の合う中学生二人
僕が中学校へ入った頃の東西引佐村は今述べたような形勢だった。大多数は伝統を重んじて、自分の村丈けを貴しとする。真の少数が目を覚まして、心配している。それは主に兵隊に行って来たものと中学校へ通ったものだ。詰まり、世間を見るから、人間が開けるのだろう。村にばかりいるものは総じて頑冥不霊だった。しかしこれは後から気のついたことで、中学校へ入った当座の僕は西から中学校へ行く連中と何うして交際を避けようかと頻りに考えていた。