轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

いしがおごる

いしが奢る

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊仲秋特別号」毎日新聞出版、1952(昭和27)年10月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,304 字 · 45 页

青空文庫

保馬は片手に扇子を持って、跼んだまま水を眺めていた、娘の来たことにはまったく気がつかなかった。娘は笑いたいのをけんめいに堪えながら、そっと保馬のそばへ近寄るなり、「わっ」と叫んで背中を叩いた。おどかすつもりだったのだろうが、足もとが慥かでなかった、背中を叩いた手に力がはいり過ぎて、あっと云ったが、まにあわなかった。前のめりになる保馬を止めようとして、絡みあったまま、水の中へと転げ落ちてしまった。

保馬はすぐ起きあがった。水は腰までしかなかったが、さかさまに落込んだので頭からずぶ濡れになった。驚くよりもわけがわからず、どなりつけようとする眼の前へ、これも水浸しになった娘が起きあがった。そうして、顔へ垂れてくる水を両手で拭きながら、さも可笑しそうに声をあげて笑いだした。

「やりそこなっちゃったわ」と笑いながら云った、「もう少しで心中するところだったわねえ」

しかし娘は眼をまるくした。相手をまちがえたらしい、あらと云って口をあけた。保馬は黙っていた。娘はおろおろし、べそをかいて、濡れている保馬のほうへ手を伸ばし、帷子の袂のところを撫でた。

「済みません、堪忍して下さい、人違いなんです。