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いとこどうし
いとこ同志
宮本 百合子
「女学生」1920(大正9)年5月創刊号、6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,760 字 · 16 页
、芳子さんは知っているのです。
ところが、或る日、五時間目の地理が済んで、皆と一緒に芳子さんも家へ帰ろうとして居りますと、受持の先生からお使が来ました。小使は、先生が御用ですからお帰りに教員室に来て下さいと云って、丸い、禿げた頭を振りながら出て行きました。
「何の御用なのかしらん」
芳子さんは、お包を抱えながら、思わず独言を云いました。何でお呼びになるのか、一向見当がつきません。けれども、何も悪い事をした覚えのない芳子さんは、ちっとも不思議にも、厭にも思いませんでした。
芳子さんはお包みが出来ると、政子さんに、「お先にお帰りなさい」と云って教員室へ入って行きました。
机に向って、何か読本を読んでいらっしゃった先生は、芳子さんが入って来るのを御覧に成ると、椅子からお立ちに成って
「あちらへ行きましょう」
と、傍の扉をお開けになりました。
其処は、ふだん使わない部屋で、参観人が、ちょっと休んだり、先生方の小さいお集りの時などに用う処なのです。
人のいない処に連れて行らっしゃったのは、勿論、多勢の人々には聞いて欲しく無いお話をなさる為でしょう。
芳子さんを、一つの椅子にお掛けさせになると、先生は少し更まった口調で仰有いました。