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うずめられたかがみ
うずめられた鏡
小川 未明
「女学生の友」1953(昭和28)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,962 字 · 12 页
「どうぞ神さま、用のない鏡は、みんな、くだいてください。そして、ただ一面だけを、私に永久にさずけたまえ。」と、となえながら、身を飛鳥のごとくひるがえして、上へ下へと、おどったのでした。
社のまわりにともる、ろうそくの火が、鏡の面に、ちらちらとうつりかがやきました。
七人の男たちが、胸をいためてまったかいもなく、彼女は、ふと病んで、まだ秋の木の葉がちる前に、あわただしく、この世から去ったのであります。
社の裏手の方へ、用水池がつくられたのは、この後、二百年くらいも、たってからのことでした。そのうち、山の上にわく白雲が、海のほうへ流れていったとき、その姿を、いくたび、この水面にうつしたかしれません。
若い女のうずめられたところは、いつしか、古墳といわれるようになりました。そして、それからまた、幾百年の月日がたったのであります。山や、川や、野原には、かくべつのかわりもなかったけれど、町や村は、その時代によって、ようすがちがい、人も馬も牛も、また幾代かの間に、たびたび生き死にしました。
丹塗りの社も、長い月日の雨風にさらされて、くちたり、こわれたりして、そのたびに、村人によって建てかえられたけれど、まだわずかに、昔の面影だけは、のこっていました。