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うずめられたかがみ
うずめられた鏡
小川 未明
「女学生の友」1953(昭和28)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,962 字 · 12 页
後になってから、烏帽子岳という名がついたけれど、むかしは、ただ三角形の山としか、知られていませんでした。山がはじめて、地上に生まれたとき、あたりは、荒涼として、なにも、目にとまるものがなかったのです。
そのとき、はるか北の方に、紫色の光る海が見えました。
「あれは、なんだろう。」と、山は思いました。この大自然について、なにも知らなかった山は、日が出て、やがて日の暮れるまでの間に、いくたびとなく、かわる海の色を見て、ふしぎに感じたのです。しかし、からだのうごかされぬ山は、ただ、いろいろと、自然を空想するばかりでした。
「どうすれば、あすこに、いくことができるだろうか。」
そのとき山は、大きな風がふいて、自分をうごかしてくれはせぬかと思いました。しかし、かつてそんなような、大きな風のふいたことがありません。こうして、ひとりぼっちでいる山は、そのころ、海だけが、なんだか自分と運命を一つにするような気がして、どうか、おたがいに、知り合いに、なりたいとねがいました。
大空をあおげば、星が毎夜のごとく笑ったり、目で話をしたりしますけれど、山はもっと身近に、友だちを持ちたかったのでした。