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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
「新潮 第五十巻七号」新潮社、1953(昭和28)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 页
念のために、おじさんの行李が入れてある押入れを覗いてみたが、改めるまでもなく持ち出されてはいなかった。おじさんの出勤先でか、若しくはその帰途かで、なにか事故が起きたのに違いなかった。
「自動車にでも轢かれたのではないかしら?」
私はそんなばかな心配をした。到頭、おじさんが帰らないうちに、夕刊のトラックの方が先に来てしまった。私達が配達から戻っても、まだおじさんは帰ってきていなかった。ようやく私達も一つの結論に落着いた。おじさんは出勤先での御法度の賭けごとが祟って、その筋の御厄介になったのに違いないと。それでも私達は、いまにもおじさんが間の悪そうな顔をして、ひょっこり帰って来そうな気がした。その夜、私達はおじさんの帰りを空しく待ち明かした。
あくる日、店の主任はおじさんの出勤先へ出かけて行ったが、やがて帰ってきての話では、やはりおじさんはその処の警察署の御厄介になっているのであった。その日十人あまりの者が一網打尽にされたそうである。おじさんはそれでも二週間ばかり拘留された。警察側としては、一寸お灸をすえたわけなのだろう。おじさんの留守の間は、私が代って紙分けをした。