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おばなさわ

おばな沢

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,479 字 · 45 页

青空文庫

泰馬は声をひそめて、囁くように云った。

「戸田はひそかに砂金を盗み、それを城下で金に替えていた、相良がそれをみつけた、意見をしてやめさせたが、隙を狙ってはまたやる、命が危いぞ、金には代えられないぞ、こう云ったがどうしてもやまない、砂金は僅かなことだ、どうでもいい、相良は彼の身を心配した、彼自身のために、そうしてそれよりも彼が、おまえの良人になる人間であるから」

「――――」

「あの朝とうとうその時が来た、戸田はまたぬけ出した、そう気づいて相良がみにゆき、彼の死体を発見した、そして彼の袂の中にはいっていたひと包みの砂金を隠し、番所へ急を知らせたのだ」

「――――」

「誰にでも聞くがいい、尾花沢へいっていた者で、お手許から特に褒賞などさがった例はない、おまえの預った金は、彼が砂金を売ったものだ。だからこそ、ひとには秘密だと念を押したのだ」

節子は眼をつむり、歯をくいしばって、わなわなとふるえながら黙っていた。

「相良は黙っていた。おれにも初めはひと言も云わなかった。諄いほど問い詰めてようやくうちあけたが、ほかに知っている者は一人もない、――相良はかたく沈黙を守っている、これからも口にするようなことはないだろう、……古い友情のために、そしてそんなにも彼を信じているおまえを、悲しませないために」