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おばなさわ

おばな沢

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,479 字 · 45 页

青空文庫

二

今になってどうしてきゅうにそんなことをきくのだろうか、――節子のほうから逆にそう反問したいくらいだったが、英之助はそのまま話を変えた。

「こうして見ると顔色もいいし、病気をしているようには思えませんね。しかし疲れていらっしゃるなら横になって下さい」

「いいえ、わたくし大丈夫でございます」

「そりゃあ大丈夫ですとも、これは催促病気というくらいで、あなたぐらいの年頃にはよく出るんです。あせらずに気をゆったりもって、できるだけわがまま勝手にしていればなおるものなんです。心配することなんかないですよ」

「――催促病気とはなんでございますの」

「いや、それはそのうちにわかりますよ」

彼はこう云って、少年のように明るく、八重歯の出る邪気のない顔で笑った。

二

尾花沢へいった英之助は、十日にいちどくらいのわりで手紙をよこした。神経のこまかくゆきとどいた、愛情のあふれるような手紙で、節子は初めそらぞらしいような気持さえした。

しかし三通となり五通となるにしたがって、意も情もつくした巧みな書きぶりと、いちずな愛の訴えにひきいれられ、こんどは反対に手紙の来るのを待つようになった。