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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页
をはいで縫ったり口も利かずにして居るので、皆から離れたがらんどうな大部屋にポツンと居る※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子の周囲はこりかたまった様な静けさが満ちて居た。
静かな所を望んで居る※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子にはその時位嬉しい時は無い筈なのだけれ共、あんまりまとまりなく拡がった部屋なので、東京では三方を本箱で封じられた様に狭くチンマリした書斎に居つけて居る※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子はどうしても此の部屋では専心に読み書きが出来なかった。
殊に九尺の大床に幾年か昔に使った妙な鉄砲だの刀だのがあるのが武器嫌いな※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子には真にたまらなかった。
其の時も平常の通り大きな大きな机に頬杖を突いて、一方の指の先で髪をいじりながら、ぼんやりと障子にはめたガラスを透して、水銀が転げ廻っている様な芝生の雨の雫だの、遙か向うに有るか無しかに浮いて見える三春富士などの山々を眺めて居た。
何の変化もない作りつけの様な総ての物の様子に倦きがきた頃不意に先ぐ目の前の梅に濡そぼけた烏が来て止まった。