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おならさま

お奈良さま

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一〇号」1954(昭和29)年7月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,159 字 · 20 页

青空文庫

女房が心配して、

「どうかなさったのですか。めっきり元気がありませんね」

「別にどうということもないが、外出先で例のオナラの方に気を配っているのでな」

「それは気がつきませんでした。そんな無理をなさってはいけませんよ」

「イヤ。無理をしているわけではない。結局はもらしているから昔に変りはないはずだが」

「イエ。気をつめていらッしゃるのがいけないのです。それに五分でも十分でもオナラを我慢するというのは大毒ですよ。今日からはもう我慢はよして下さい」

「それがな、どういうものか、ちかごろでは習慣になって、オナラが一定の量にたまるまで自然にでないようになった。自宅にいてもそうだ。ノドまでつまってきたころになって、苦しまぎれにグッと呑み下すようにすると、にわかに通じがついたようにオナラがでてくるアンバイになった。もうすこしで目がまわって倒れるような時になって通じがつく」

「こまりましたねえ。お医者さまに見ていただいたら」

「とても医薬では治るまい。これも一生ところきらわずオナラをたれた罰だな。私のオナラはこれでよいが、お前のオナラをきかせてみてくれ」

「なぜですか」

「唐七どのが言ったのでな。