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おちゃのゆまんぷくだん

お茶の湯満腹談

夢野 久作

「文芸通信」1935(昭和10)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,250 字 · 5 页

青空文庫

この家へ来られる人達でも西洋人の方が畳の上へ上って坐りたがる。日本人の方が土間の椅子に足を伸ばして葉巻を吹かしたがるようなありさまで、話がアベコベでさ。ハハハハ。横浜へ行ってみると西洋人が裃を着て、片手に豆の桝を抱え込んで『フクワアウチ……オニワアソト』ってんで気でも違ったのかと思って聞いてみると、これがヤッパリその日本研究なんだそうで、イヤまったく面白い世の中になりましたよ。ワハハハ」

なぞ言う無邪気な主人翁の愛嬌話のうちにお茶席に案内をされて、名にのみ聞きし懐石なるものが出た。内心恐れをなしながらよく見ると、これも主人翁の心配りであったろうか。普通の御飯に相違ない事が筆者にもハッキリとわかったので大いに安心して大いに面喰らった。主人翁御自慢の高粱パンも非常に美味しく頂戴した。それに続いて五分搗米飯。わけぎ味噌汁。もやし和もの。白魚白味トジ清汁。亜米利加鱒乾物酢。いずれも誠に少量なのでタッタ一口で片付いたものもある。そのうちにスッカリ満腹して涙ぐんでいる処へ、前記の後半部の献立がアトからアトから出て来るので大いに面喰らった。懐石というものは、こんなに早くお茶を飲んでしまっちゃいけなかったのかとも思い、又は懐石というものは一品も喰い残しちゃいけないものと聞いていたようにも思えて内心すくなからず迷ったが、