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おさかなじょし

お魚女史

坂口 安吾

「八雲 第三巻第八号」八雲書店、1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 19 页

青空文庫

張って悪いはオヤジの頭ア。張らなきゃ食えないチョーチン屋ア」

とんでもない大声をはりあげる。外は嵐だから、いゝようなものゝ、はずかしくて、とても聞いていられない。私はねむくなったので、先にひきあげて、ねむってしまった。

私の家にはフトンが二人ぶんしかないのである。夏なら何人でもお泊めできるが、春さきの嵐の日では、一人だけしか泊れない。御三方の帰る電車は、もう、なくなっていた。そのころは、節電のため、終電が早やかったのである。

お魚女史は我が意を得たりと御三方を防空壕へ案内し、夜の明けるまで、デンスケと三つのピースの箱をやった。御三方は、スッテンテンにやられたのである。困ったことには、女房の奴まで喜び勇んで、ついて行って、私の紙入れをカラにしてきた。

その日以来、凹井狭介先生が足繁く私を訪問するようになった。理由は申すまでもなくお判りであろう。

弁吉がアゴをなでゝ、

「アハハハ。四十の恋も、案外、つつましいもんだねエ。ハハハア」

などゝニヤリニヤリしているが、その本人も、同じ程度の心境であろう。

成行の程は判らないが、どうせバカゲタ結末にきまっている。