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おさかなじょし
お魚女史
「八雲 第三巻第八号」八雲書店、1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 19 页
その朝は玄関脇の応接間に×社の津田弁吉という頭の調子の一風変った青年記者が泊りこんでいた。私は徹夜で×社の原稿を書きあげたところで、これから酒をのんで一眠りと、食事の用意ができたら弁吉を起そうと考えていた。その弁吉がキチンと身仕度をとゝのえて、ノッソリとあがってきた。
「ねえ、先生、妙な女が現れたよ。キチガイかも知れないねえ」
文士の生活になじんでいる雑誌記者というものは、若年で、頭のネジが狂っていても、訪問客にヘマな応待はしないものだ。私が安心していると、弁吉はニヤリ/\と、
「ねえ、先生、会っておやりよ。海のねえ、ホラ、お魚ねえ、お魚みたいな喋り方をするんだよ」
「パクパクやるのかい」
「そうじゃないんだよ。会ってみないと判らないんだ。とにかく、美人だね。ハハハ。すごく、色ッぽいんだ。ちょッとね、目にしみちゃってね、ハハハ、ボクは美人にもろいんだよ。デねえ、社の原稿書いてもらってるところだろう。本来なら撃退しなきゃアならないんだけどねえ、そこんとこを何とかしてあげるッてネ、恩をきせてネ、ハハハ、約束しちゃったんだよ。だからさ、会ッてやっておくれよ、ねえ。