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からすのうたうたい
からすの唄うたい
小川 未明
「時事新報」1925(大正14)年5月7日~19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,709 字 · 12 页
「このからすが、唄をうたうというのだな。」と、主人は、宿屋の主人にたずねました。
「さようでございます。おじいさんにつれられて街々を歩いて、唄をうたったからすはこれでございます。」と、宿屋の主人は答えました。
工場の主人は、からすをやはりきれいなかごにいれて、他のおうむや、いんこなどと並べて、縁側にかけました。からすが唄をうたうのを聞くのを楽しみにしていました。
他の鳥は羽は美しく、ちょうど美しい織物か、また彩られた絵を見るように華やかであったけれど、からすは真っ黒で、その体には珍しい、美しい、色彩もついていませんでした。この家の、お嬢さんや坊ちゃんは、
「なんだい、こんな黒いからすなんかつまらないなあ。」といって、かごの前に立って、悪口をいいましたけれど、主人は、そんなことに頓着せず、ただからすが唄をうたうのを聞くのを楽しみにしていました。
日はたちましたけれど、いっこうからすは唄をうたいませんでした。からすは、毎日とまり木に止まってじっとしていました。そして、驚いているように、黒いさんしょうの実のような円い目をくるくるとしていました。
「場所が変わったので、それで鳴かないのだろう。