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がん

がん

小川 未明

「民政」1934(昭和9)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,900 字 · 6 页

青空文庫

しかし、私の力は、もうそこまでゆくことができない。どうか私をここに残してみんなは、早く旅を急いだがいい。」と、年とった、哀れながんがいいました。

「おじいさん、そんな気の弱いことをいってはいけない。私たちは、おじいさんを捨てて、どうしてゆくことができよう。二日でも、三日でも、おじいさんの体がなおるまで待つことにします。」と、Bがんがいうと、Kがんも、Sがんも、みんながその言葉に賛成しました。

しかし、年とったがんにとって、この山中の湖は彼のしかばねを葬るところとなりました。まだ、湖の上が鉛色に明けきらぬ、寒い朝、彼は、ついに首垂れたまま自然との闘争の一生を終わることになりました。

その日は、終日がんたちは、湖上に悲しみ泣き叫んでいました。そして、夜になると彼らの一群は、しばらく名残を惜しむように、低く湖の上を飛んでいたが、やがて、Kがんを先頭に北をさして、目的の地に到達すべく出発したのであります。それは、星影のきらきらと光る、寒い晩のことでありました。