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さるかにかっせんとももたろう

さるかに合戦と桃太郎

寺田 寅彦

「文芸春秋」1933(昭和8)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,885 字 · 6 页

青空文庫

近ごろある地方の小学校の先生たちが児童赤化の目的で日本固有のおとぎ話にいろいろ珍しいオリジナルな解釈を付加して教授したということが新聞紙上で報ぜられた。詳細な事実は確かでないが、なんでもさるかに合戦の話に出て来るさるが資本家でかにが労働者だということになっており、かにの労働によって栽培した柿の実をさる公が横領し搾取することになるそうである。なるほどそう言えば、そうも言われるかもしれない。しかしまた、一方で、多年手塩にかけた子供らを安心して学校に託している「赤くない親たち」の心持ちから言えば、せっかく苦労して育てただいじのだいじの子供らを赤い先生のためにだいなしにされたと思うかもしれない。そうすると、この場合のさるは先生でかには親たちである。また、親が多年の辛苦でたくわえた貯金を赤いむすこや娘が運動資金に持ち出したとすれば、その場合のさるは子供でかにはおやじである。さらにその子供を使嗾して親爺の金を持ち出させた親ざるはやはり一種の搾取者である。

桃太郎が鬼が島を征服するのがいけなければ、東海の仙境蓬莱の島を、鎚と鎌との旗じるしで征服してしまおうとする赤い桃太郎もやはりいけないであろう。