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ちょうとどとう

ちょうと怒濤

小川 未明

「中学生」1922(大正11)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,746 字 · 10 页

青空文庫

「またお目にかかります。」といって、どこへともなく飛び去ってしまいました。

その後で、美しいちょうは、独り物思いに沈みました。ちょうは、人間の造った町にいってみたくなったのです。「人間は、美しいものはなんでも好きだというから、きっと、自分も好きにちがいない。好きなものは、たとえ捕らえても、命を取るようなことはしないだろう。そして、かえって、愛してくれるにちがいない。」と、ちょうは思ったのであります。

ちょうは、いつまでも、この野原の中を、あちらこちらと飛んでいることに飽きてしまいました。そして、ぜひ一度、だれでもいってみたいと思う町にいって、いろいろな珍しい花を見てこようと思いました。

ある日、ちょうは、いつか、みつばちのいったことをも忘れて、野原を離れて、あちらの空へ独りで飛んでゆきました。これは、いい天気の日で、空の色は、四方一帯に晴れていました。しばらく旅をしたと思うと、ちょうは、はるか目の下に黒い屋根の固まった町を見たのであります。

「美しい花のあるというのは、この町か。」と、ちょうは思いました。

しかし、ちょうはどこへ降りたらいちばん安全だろうと、しばらく空中に迷っていました。