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ちょうとどとう

ちょうと怒濤

小川 未明

「中学生」1922(大正11)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,746 字 · 10 页

青空文庫

美しいちょうがありました。

だれがいうとなく、この野原の中から、あまり遠方へゆかないがいい。ゆくと花がない、ということをききましたから、ちょうは、その野原の中を飛びまわっていました。

しかし、その野原は広うございましたので、毎日遊ぶのに、不自由を感じませんでした。自分ばかりでない、たくさんのほかのこちょうもいました。また、みつばちもいましたから、さびしいことはなかったのです。

野原には圃がありました。菜の花が咲いています。また、麦がしげっています。そのほか、えんどうの花や、いろいろの花が咲いていました。その花の上や、青葉の上を飛びまわっているだけでも、一日かかるのでありました。

ある日のこと、みつばちは、そのちょうに向かっていいました。

「私たちは、菜の花や、えんどうの花の上を飛びまわっているだけなら、まちがいはありません。それはこの圃の中にさえいれば、夏になると、なすや、うりの花が咲きますから、とうぶん花の絶えるようなこともありません。その時分にはせみも鳴くし、いろいろの虫も鳴きます。まあ遠くへいくなどという考えを起こさずに、おちついていることですね。