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つばめとうお
つばめと魚
小川 未明
「初等四年」1946(昭和21)年10月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,208 字 · 5 页
そして、心からそう思うもののごとく、
「いいな、こんな魚たちは、なんにも知らずに、のらり、くらりと、ただ食べて、泳いでいられて、おれたちは、病気で、仕事を一日休むのも、容易でないんだからな。」と、ひとりごとをいいました。
たとえ、それが事実であっても、この世の中では、まだ少年に真に同情するものがなかったのです。少年は、また重そうに病める足を引きずりながら、歩いていきました。
日が暮れると、このごろは毎晩のように、いい月が出ました。月は町の家々を照らして、戸のすきまからのぞきこみました。
「こんな月を見ると、さすがに、くにを思いだすな。」と、熱帯魚の一匹が、いいました。
「あのジャングルを流れる、おれたちのすんでいた川をてらすだろうか。」と、ほかの一匹も、月をながめました。
「しかし、こういう月夜に、私たちは、よくあの怖ろしいへびにねらわれたものだ。それを考えると、二度と、あの川へ帰りたいと思わない。」
「そうだけれど、おれたちのきょうだいが、あすこにいるだろう。つばめさんが帰るとき、ことづてを頼もうじゃないか。」と、魚たちは、清らかに、月のさし込む、ガラスばちの中で話をしていました。