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とうげのちゃや
とうげの茶屋
小川 未明
「新児童文化 第2冊」1947(昭和22)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,035 字 · 12 页
」
「歩くものが、なくなりましょうな。そうすれば、もう、この商売もどうなりますか。」
おじいさんは、力なくいいました。
「世の中が、便利になれば、一方に、いいこともあるし、一方には、わるいこともある。しかし、そこは頭の働かせようだ。考えてみさっしゃい。近い他の村から、みんなこの道へ出てくるだろう。バスの停留場が、この家の前にでも着くことに決まったものなら、この店はいくら繁昌するかしれないぜ。」
「そうでございましょうか。」と、おじいさんは、白髪頭をかしげて、あたらしくいれた茶を助役の前へ出しました。助役は茶わんをとり上げながら、
「それも、運動するのはいまのうち、早いほうがいいぜ。」といいました。
「運動するといいましても、なにぶん、この年寄りひとりではどこへも出られません。」と、おじいさんは、かしこまってすわり、ひざの上で、しなびた手をこすっていました。
「なに、おまえさんがその気なら、代わって運動をしてやってもいい。」と、若い助役は、相手の心持ちを読みとろうと、鋭く、おじいさんの顔を見ました。
おじいさんは、心で、どうせそれには金がいるんだろう。いったい、いくらばかりあったら、その望みがかなえられるのかと、もじもじやっていました。