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とびよなけ

とびよ鳴け

小川 未明

「小学六年生」1940(昭和15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,471 字 · 12 页

青空文庫

お父さんが自分の働いた金で買ってもいいといったのに。」

彼の投げる球がだんだん熱を持ってくるのでした。

「辰ちゃん、すげえ球を出すなあ。」

見ている友だちまでが、目をみはって、いいました。その球を受け取る勇吉も、顔を赤くして、額に汗ばんでいました。強い球で、なかなか骨がおれるからです。

「君、いい球を出すね。しっかり勉強すると、ピッチャーになれるぜ。」

さっきから、そばで見ていた、角帽を被った学生らしい青年が、いいました。

辰一は、ほめられたので、ちょっとはずかしかったのです。

「僕ら、毎日曜の午後から××の空き地で、けいこをしているから、君もぜひやってきたまえ。そのうちにこの方面のものだけで、チームを作ろうと思っているのだ。」と、青年は、辰一にいったのであります。

辰一は、そういわれると、なにか急に明るく、力づけられたような気持ちがしました。

(ほんとうかしらん、おれは、ピッチャーになれるだろうか。)

「ありがとう。」といって、辰一は、青年に頭を下げました。そうだ、おれは、徳蔵さんのことを考えればいつだって気持ちがしゃんとして、どんないい球でも出してみせるぞと、心に叫んだのです。