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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
伝えの里は 滅べども
なよ竹のささめく里は
消ゆれども
天雲の下なる人は、汝のみかも
天雲の下なる人は、汝のみかも
人はみな 君に恋うらむ
……恋路なれば。
われもまた 日に日に益る
行方問う心は同じ 恋路なれば。
契り仮なる一つ世に
踏み分け行くは 恋のみち
踏み分け行くは 恋のみち
なよたけの声 (舞台奥より)文麻呂! 文麻呂!……
薄紗の幕が再び次々に繰り上って行く。場面は、竹林を出たばかりの所で、小高い丘陵の一端の感じ。遠い丘陵が幾つか連なっているのが夜空に遥かに黒く浮んで見える。――
天空には燦然と、星々がきらめいて、深遠なる宇宙の絵図が果しもなく拡がっている。
中央に、なよたけが前幕と同じ華麗な衣裳を身にまとって、冴え渡った星空を背景にして、立っている。片手にはしっかりと竹の小枝を握ったまま、何か差し迫る眼に見えない大きな力に弱々しく抗している様子である。
その顔は「面」のように作られ、奇妙に清らかな「死相」を感じさせる。天空の彼方から吹き来たる風が、衣裳の袂や、手にした竹の枝葉をかすかに揺らしている。……
文麻呂の声 (右手より)なよたけ! なよたけ!……