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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

なよたけ 文麻呂!……あんたのお父様?

文麻呂 うん、……そしてお前の優しいお父様だ。……お父上はきっとお前を喜んで迎えて下さるに違いない。きっとお前をこの上もなく可愛がって下さるよ。

なよたけ でも、文麻呂。……あたしの顔を見て。あたしにそんな遠い所まで旅をする元気があるかしら?……ああ、あたしはなぜだかだんだん身も心も疲れきって行くわ。どうしてかしら? 何だかこうして立っていることさえ耐えられないほど苦しいの。……

文麻呂 (不吉な予感を打ち消すように)なよたけ! 何でもないんだ! しっかりおし! お前はただ疲れているんだよ。……ねえ、なよたけ。それじゃ、お前がまた元気な体になるまでどこかで待っていてもいい。ここからそんなに遠くない瓜生の山里に、衛門と云う僕の忠実な爺やが瓜を作りながら暮しているんだ。僕達はこれからそこへ行こう! しばらくその家に厄介になって、お前がすっかり元気になってから改めて東国へ旅立つことにしよう!……ね? いいだろ?……さあ、なよたけ! とにかく、この丘を下りよう! (促すように、舞台奥を指し)あんな広々とした天地が僕達を呼んでるんだ!