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はたしじょう
はたし状
山本 周五郎
「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页
そんなことを云った。
「わたくし藤島へ相談にゆきました、自殺しようかと思ったのですけれど、江戸にいらっしゃるあなたのことを考えると、どうしても死ぬ気にはなれなかったんです、藤島はあなたとは二十年ちかいあいだも、兄弟より親しくしていらしって、わたくしも頼りに思っていましたから……藤島は怒るよりも悩みました、あなたとわたくしのために、どんなに悩んだか、あなたに御想像がつくでしょうか」
しのは身を汚されたものと信じていた。もう取返しはつかない、どんなことをしても第二の妻にはなれないと思った、一方では千久馬が結婚を申し込むという、そのばあい彼がなにを云うかは察しがついた。
――私が八木と会います、しかしそれには条件がある、ことによると私と結婚しなければならなくなるが、それでもいいですか。
英之助は決意のある口ぶりでそう云った。千久馬が結婚を申し込むまえに千久馬に会って、自分がしのとあやまちを犯したと云う。そう聞けばおそらく彼は手を引くだろう、それでもなお自分の暴行を告白する勇気はあるまい。事は急を要した。そして英之助はすぐにその方法を執った。……予想どおり千久馬は手を引いたが、返報のように和田へいって、英之助としのとが密通していると告げたのである。