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はたしじょう
はたし状
山本 周五郎
「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页
嗚咽にむせびながら、恨みを述べるように云った。
「藤島はあなたのことを心配しどおしでございました、あんまり苦しまないで呉れればいいが、……いつもそう云っておりましたわ、あんまり苦しんで呉れなければいいが……」
第二は立って廊下へ出た。それから暗い風呂舎へはいり、壁に凭れかかって泣いた。
「きさまは愚かなやつだ、第二」彼は泣きながら自分を叱咤した、「――そんなにもばかだったのか、そんなにも……あんまりじゃないか第二、なんと云いようもないじゃないか」
藤島の言葉。千久馬の云ったこと。いま改めて思い返し、比較してみると、その虚実はあまりにはっきりしている。自分がもう少し男らしくじかに藤島に会えばよかった。じかに会って話せばこんな誤解はせずに済んだ。
――一人の女のために二十年の友情がこんなに脆く毀れていいだろうか。
落葉のなかで云った英之助の言葉が、殆んど現実の痛みを伴って、彼の胸を刺した。第二は拳を握り額を壁へ押し当てて呻いた。そしてまたひとしきり声をころして泣いた。
第二が顔を洗い身づくろいをして戻ると、燈火を明るくかきたてて、しのの側に英之助が来て坐っていた。