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ひとでなし
ひとでなし
山本 周五郎
「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页
つもりになった、自分があのうちの勝手へ忍びこんだのはそのためだ、と男は云った。
「勝手へ忍びこんだのは、旦那の帰るのを待つためだったが」と吉次は続けた、「二人の話を聞いていて、あの人の云うことを聞いて、あっしは気持が変ったんです、――あんな悪党のことを可哀そうな人って、旦那のようないい方にあいそづかしみたようなことを云ってまで、あの人でなしの畜生の肩を持った、泥まみれ、傷だらけになった、可哀そうな人だって、――旦那、あっしも兇状持ちだ、まともなことの云える人間じゃあねえが、おようさんのような人を、これ以上いためるなんてこたあできません、おねげえだ、旦那、あの人をごしんぞにしてやっておくんなさい、力造のほうは片をつけます、野郎はあっしが片づけるから、どうかおようさんのことを頼みます」
吉次という男は二度も三度も頭をさげ、そうしながら、手の甲で眼を拭いた。
「わかりました、おようのことは引受けます」と康二郎が云った、「今夜のようなことがあったからすぐにとはいかないでしょう、あの店をもう少しやらせて、あれの気がしずまったら津ノ正へいれる