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ひどいけむり
ひどい煙
久生 十蘭
「オール讀物」1955(昭和30)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,064 字 · 18 页
朝あけから、床几に縛りつけて、射場の地取りを見せておいたが、貴様には、この謎がとけなかったそうな」
「とても、そこまでのことは……しかしながら、玉の出ぬ大筒は射てぬはず。これは、近頃もって難題にございますな」
和流砲術の装薬の定め方は、玉目百匁について、火薬四十匁の割になっているが、相手は諸元を狂わせた得態の知れぬ大物で、装薬の割が一匁ちがっても、砲身といっしょにすっ飛ばされる恐れがある。喜太夫としても、そこまで危険をおかす気はないから、そういって逃げにかかったが、外記はゆるさず、
「玉が出ぬとは、なにによって詮じつけた。玉割はどうだろうと、持矢倉を測って射ちあげるくらい、なにほどのことがあろうか。貴様が否なら、伜の喜三郎にやらせる。そのかわり、嚮後、砲術に関するかぎり、一切、大きな口をきくな。火薬箪笥を抱えて、土蔵のなかにひっこんでいるがよかろう」
と憎体に罵った。
田付四郎兵衛は、浅黄木綿の袴の膝に手を置き、温和な微笑をうかべながら、二人の争論を聞いているばかりで、頼みにならない。喜太夫は、そのとき勃然たる怒りを感じ、いつになく、手強く言い返した。