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びんのなかのせかい

びんの中の世界

小川 未明

「赤い鳥」1927(昭和2)年1月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,126 字 · 9 页

青空文庫

「ちょっとそのびんをお見せ。」といって、男はびんを取り上げて、口に目を当ててのぞきました。

「まことに珍しいびんだ。私は、このびんを探していたのだ。坊は、私といっしょにこないか?」と、馬に乗っている男はいいました。

正坊は、かねて、おばあさんから、おじいさんの話を聞いていました。「おじいさんは、山を越して、だれか、きっと迎えにくるといって待っていられたそうだ。それは、けっして、もうろくなされたから、そんなことをおっしゃられたのでなかろう。その男というのは、きっと、この人にちがいない……。」と、正坊は心の中で思いました。

「おじさんは、どこからこられたのですか?」と、正坊は、たずねました。

「海からきた。」と、馬に乗っている人は答えた。

それで、正坊は、まさしくこの人だと思いましたから、その男のすすめるままに、いってみようと、即座に決心しました。

男は、自分の脇に正坊を乗せて、馬にむちを当てました。その馬の脚は速かったのです。森や、川や、丘を過ぎてゆくと、いろいろの美しい花の咲いた野原に出ました。はるか、あちらを見ると、町の屋根が地平線に浮き上がって見えたのです。