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まかないのぼう
まかないの棒
黒島 伝治
1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,538 字 · 10 页
京一は、助かったと思って喜んだ。従兄に訊ねると叱られるかもしれないが、恥しい思いをしなくもいい。
「まかない棒いうたらどれどいの?」
従兄は、例の団栗眼を光らして怒るかと思いの外、少し唇を尖らして、くっくっと吹き出しそうになった。が、すぐそれを呑み込んで、
「ううむ?」と曖昧に塩入れ場の前に六尺の天秤棒や、丸太棒やを六七本立てかけてある方に顎をちょいと突き出して搾り場を通り抜けて行ってしまった。
京一は、丸太棒を取って、これがまかない棒というんだろうと思った。従兄は顎でこの棒を指していたと思われた。もうそれより外に、まかない棒という名の付きそうな棒はなかった。彼は、その棒を持って、焚き火の方へ行って、古江の傍に黙って立って居た。
「持って来たんかい。」
古江の鬚面は焚き火で紅くほてっていた。
「は。」
十人ばかりの焚き火を取り巻いている労働者達は、一様に京一を見て、くっくっ笑った。
「それがまかない棒かい?」
「よう…………」
「どら、こっちへおこせ!」
従兄は団栗眼を光らして、京一の手から丸太棒を引ったくった。そして、いきなり、棒を振り上げて、京一の頭をぐゎんと殴って、腹立たしそうに、それを傍の木屑の上に投げつけた。