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みごとなおんな

みごとな女

森本 薫

「劇作」1934(昭和9)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,668 字 · 34 页

青空文庫

収 そうですとも。どこかお話があるんですか。

真紀 ええ、まあ。

収 いいですね。医者、やはり。

真紀 ああ。

収 あのひとの知ってるひと?

真紀 いいえ。でも顔やなんかは知ってるの。お友達の兄さんで……お家もよく知ってるし……。

収 それならいい。

真紀 鈴木内科へ出てる方なのよ。

収 そうですか。それで……。

あさ子。

あさ子 母さん、電話。

真紀 (立上り)そう、何方?

あさ子 知らない。男の方よ、誰だか分かりますかって、笑ってるの、厭だわ。

真紀 そうかい。(去る)じゃ。

あさ子 今お店へ来た人ね、爪切りを呉れって言うのよ。こちらは薬局ですから爪切りはありませんて言ったら、そしたら剃刀の替刃って言うの、化粧品ならありますって言うとね、僕の奥さんは三十七になるが、今日迄一度も和製の化粧品を使ったことのないのが誇なんだって。此の間も独逸の何とか言う会社へ直接注文して、二十何円もするクリームを取寄せたんだって。そしてね、僕は主戦論者だが、その第一の理由は、もし戦争が始ったら、うちの奥さんも、少しは国産愛用者になるだろうと思うからだって。店でみんな大笑いしてるのよ。

収 ――。