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みごとなおんな
みごとな女
森本 薫
「劇作」1934(昭和9)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,668 字 · 34 页
人
あさ子
真紀
収
弘
豪奢と言うのではない、足りととのった家庭。人形をかざったピアノが一つ、坐り机が一つ、縁先に籐椅子が二つ、卓。みるところ若い女の部屋らしい。
六月。
誰もいない。
あさ子。二十四。和服。身体つきは大柄で少し肥っているが美しい。時々片手を上げて指先で両の眉を内から外へ撫でつける癖がある。話をさせても他人の調子には頓着なく、緩り句切って云うようなところがある。外出から帰ったところ。すこしの間部屋の真中に立って周囲を見まわし、思い出したようにピアノの前にいく。
ちょっとためらった後、ショパンの作品九番の第二の夜曲をさぐりさぐり弾き出す。甚だしく拙い。少し弾いて直ぐ行詰まって了う。立ち上って、楽譜をさがす。
あさ子 (さがすものが見つからないらしく)どうしたのかしら……。(もう一度、そんなに多くもない楽譜をパラパラ繰る)あ、そうか……(楽譜を放り出してピアノを離れ、ゆっくり縁側へ出て、又入って来る。机の横に置いた小物入れから作りかけにした衣装人形を取り出し、縁側に行って椅子にかける)
真紀。四十七。ずっと若くみえる。
真紀 (縁づたいにきて通り過ぎそうになって気がつき)おや。