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みごとなおんな

みごとな女

森本 薫

「劇作」1934(昭和9)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,668 字 · 34 页

青空文庫

あさ子 母さん大概傍にいるじゃないの。

真紀 いない時のことよ。

あさ子 いない時だって、おんなし。

真紀 昨日はお天気だったが明日は雨だろう、とか、家の二階の梯子段は十二段だけれどあんたんところは何段ですって話だの、そんな話ばかりかい。

あさ子 そんなに何時も何時もお天気の話ばかり、しやしない。

真紀 あなたのは、大概そのへんよ。

あさ子 (睨む)まあ。

あさ子、指先で眉を撫でつける、之で三度目くらい。真紀、真似る。

あさ子 母さん!

真紀 私が言うのよ、それは。わるい癖よ。

あさ子 憚かりさま。

真紀 いくつだい、収さん。

あさ子 (拗ねて)しらない。

真紀 二十、四?

あさ子 三。

真紀 じゃ、一つ下ね、あなたより、そうは見えないねえ。

あさ子 老けてみえる方ね。

真紀 男はその方がいいんだよ。

あさ子 女は?

真紀 女はあなた、(気を換えて)莫迦なことを訊くものじゃない。何時だってそれよ、あなたは。(間、一寸躊った後)あなた、此の間、よし子さんのところへお招ばれして行ったね、お祭とかで。

あさ子 え。

真紀 あの時、何方かに会ったあすこで。

あさ子 いいえ。

真紀 そう。

あさ子 よし子さんのお兄さんって、あんな方あたししらなかった、あの時迄。