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オフェリヤごろし

オフェリヤ殺し

小栗 虫太郎

「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页

青空文庫

「許してくれ――成程、よく判った」そう云って検事は、皮肉な微笑を法水に投げた。

「然し、それだけでは、決して深奥だとは云われない。第一それでは、風間が吾が子を殺さねばならなかった心理が説明されていない」

「それから王妃の衣川暁子には、二つの花の名を云ったにも拘らず、折れた雪の下を渡した……」

検事の抗議にも関わらず、法水はずけずけと云い続けた。

「それは折れた母の愛――なんだよ。ねえ支倉君、この譬喩の峻烈味はどうだね。

それから、レイアティズの小保内精一には、白蠅取草と黄撫子を渡して、恥じよ、裏切者――と云い渡しているのだし、

あの方と云って、その場にいないポローニアス役の淡路研二には、仏蘭西金※花と蝗豆草を渡して、復讐、地下から報い――と叫んでいる。

勿論その二人には、風間に対する裏切者と云う意味の、風刺を送った訳だが、寧ろそれは、主謀者だったロンネに送られねばならないだろう。

所がまた、王に扮したあの男に、渡した花と云うのが、頗る妙なんだよ。第一に、紫丁香花――これは初恋のときめきだ。それから花箪草は、もう信ぜられぬ――と云う意味なんだし、最後には、紅おだまきを渡して、怖るべき敵近づけり――と警告を発しているのだ。