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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

無論日本人の同僚さ。我輩とラシャメンのありもしない関係が評判になって、或朝、我輩の机の上にベッケルからの果し状が置いてあった」

「イヨ/\参りましたな」

「晩の十時にお好みの武器を持って介添を一人つれて、会社の裏の松林へ来てくれとある」

「成程」

「我輩も後へは引けない。行ったよ。当時はこの裏一帯が田圃さ。日が暮れゝば人っ子一人通らない。果し合いには持って来いのところだ」

「胸がドキ/\します」

「ベッケルはベックマンという相役の技師を介添につれて松林へ来ていた。月夜の晩だった。我輩は襷十字に綾取って、向う鉢巻、相好がもう殺気を帯びている。『君は介添をつれて来ないか?』とベッケルが訊いた。『つれて来た』『何処にいる?』『これだ』と言って、ギラリとばかり二尺八寸、家重代の国光を振り被った」

と社長は立ち上って、その通りの構えをして見せた。

「到頭おやりになりましたな」

「我輩は二人を斬って死ぬ覚悟だったからね。西洋の決闘は傷をつければ宜いんだ。意気込が違う」

「ベッケルは何うしました?」

「ベックマンと相談を始めて、結局、介添のいない決闘は法式に適わないから厭だと言い出した」