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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

高顴広額

僕達の肩身を狭くしようってんだ」

「実際肩身が狭い。この二三日はこゝに閉じ籠っていて余り出て歩かないことだね」

と松本さんは元気がない。

社長はいつもの通り十時に出勤した。

「お早うございます」

と私達は手のものを置いて出迎えた。

「お早う」

「昨晩は失礼申上げました」

「何うだね?」

「はあ?」

と松本さんは猶予を申入れた。

「何うだね? 熊野君」

「エレベーター事件でございますか?」

と私は朝からそればかり頭にあったので、つい口に出してしまった。

「何を言っているんだ? 寝が足りなかったと見えて頭が悪いね」

と社長はもう意に介していないようだった。

高顴広額

エレベーター事件以来、私達秘書役は慎んで勤務している。先頃までの意気がない。少くとも私一箇に取っては、お灸が好い薬になった。浅ましい話だが、私は社長の信任を笠に着て、いつの間にか故参の同僚を下目に見る癖がついていた。畑君あたりと話をしていて、課長連中の噂が出ても、

「何あに、あの男は駄目だよ」

と一口に貶しつける。

「何故?」

「大将に信用がない」

「ある筈だがな」

「いや、ないよ。この間僕の見ている前で叱りつけられた」