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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
「キング」1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页
「はあ」
と答えたが、私は少々不服だった。英語を英学と呼ぶ時代の人に何が分るものかと思った。
「我輩は最初から英国人についたから、発音が好いよ」
「はゝあ」
「それに場数を踏んでいる。会社の幹部が独逸人ばかりだった頃はすべて英学で用を足していたし、彼方では時折演説をやったものだ」
「御外遊はいつ頃でございましたか?」
「もうソロ/\十年になるかな。我輩の英学には彼方の人達が驚いていたよ」
「御講演でございましたか?」
「いや、食後の演説さ。君達は知るまいが、彼方では食後デザート・コースに入ると主立った人間は何か喋らなければならない。指名されて即席にやるんだ」
「テーブル・スピーチでございますな」
「いや、テーブル・スピーチなんて言葉は彼方にない。それは日本人が拵えた英学だろう。彼方ではアフター・デンナー・スピーチという。後学の為め覚えて置き給え」
と社長は西洋人が行ってしまってから語学の法螺を吹き始めた。
「社長」
と松本さんは昨日から反感に燃えている。
「何だい?」
「それほどお達者なら慌てゝ通訳を探し廻るにも及ばなかったじゃございませんか?」
「何も慌てやせんよ」
「はあ」