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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

「君は我輩が自分で事に当れば宜かったと言うんだろう?」

「はあ」

「それは外国語を知らない素人考えというものさ」

「何故でございましょう?」

「幾ら達者でも、外国語は自国語と違う。自然控え目になって遠慮勝ちに話すから分が悪い」

「成程」

「英米人と日本人が英語で話しているところを見給え。何うしても日本人が英国人なり米国人なりから取調を受けているような形になる」

「それは確かに然うでございますな」

「これは英学の力に甲乙があるからだ。反対に日本語で話して見給え。今度は西洋人が日本人から取調を受けているような形になる」

「御道理でございます」

「それで我輩は通訳をつけたのさ。国産ビールは如何なる点に於ても西洋に負けたくない。始終我輩の側にいて我輩の精神が分らなくては困る」

と社長は何につけても一見識立てないと承知しない人だ。英学のお蔭で出世したというのだから、話せば本当に達者かも知れない。

「社長、お序に何か御外遊中の御逸話を拝聴したいものでございます」

と私は松本さんの安全の為めに話頭の転換を試みた。

「さあ」

「失敗談でも結構でございます」

「自叙伝に失敗談を入れちゃ困る」