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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
「キング」1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页
「厄介な習慣ですな」
「忘れていると睨みつけられる」
「しかし頭によっては御覧に入れない方が却って敬意かも知れませんよ」
「よく突っかゝって来るね」
「いや、一般論です」
「誤魔化したね」
「ハッハヽヽ」
「ところで、君、痛快なことがあるんだよ。最近この脱帽の習慣が経済上持ち切れなくなったというんだ」
「はゝあ」
「シカゴ丈けの話だが、男子がエレベーターの中で婦人に敬意を表すると、年に二万五千弗の経費がかゝる」
「何ういう意味でしょうか?」
「帽子を斯う両手で持っているからね。肘が突っ張る。その結果として、男子四人が脱帽していると丁度一人前の空間を塞ぐ。二十人の男子が敬意を表して見給え。五人乗れなくなる勘定だ」
「成程」
「従って運転回数が増すから、動力を無駄に使う。機械を早く傷める。それが年に積るとシカゴ丈けで二万五千弗だそうだ」
「はゝあ」
「アメリカ全体だと莫大な数字になる。これ丈け費用をかけて婦人に敬意を表する必要があるか何うかというのさ」
と社長はロク/\喰べないで語り続けた。座談の上手な人だから、虚心に聴いていても面白い。
食後、松本さんと二人でエレベーターに乗って直下する途中、私の頭に致命的の着想が浮んだ。