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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

「宜いとも」

と私は素より発起したのだから異存がない。

エレベーター・ボーイといっても、河野は立派な青年だった。

社長室や重役室に近いところを受持っている。

「こゝは客種が好いね」

と私は冗談を言ったことがある。

「へい。社長か重役か重役候補のお方ばかりです」

と河野はお世辞を言った。その重役候補が二人で晩飯を御馳走したのだから、大いに恐縮して、

「一体何ういう御用でございますか?」

と伺いを立てた。

「他のことでもないが、明日の昼、社長と僕達がエレベーターに乗った時、五階と六階の間で一分間ばかり止めて貰いたい」

「はゝあ。何うするんでございますか?」

「社長を驚かすんだ。実は……」

と松本さんが経緯を簡単に説明した。

「折角でございますが、御免蒙ります」

「何故?」

「そんな悪戯をすると首になります」

「首は僕達が保証する」

「大丈夫でございましょうか?」

「安心してい給え。万一にも叱られたら、僕達が無理にさせたと言えば宜い」

「しかし……」

「一寸止める丈けだ。『故障です。あゝ、ロープが切れたようです』と言ってくれゝば、尚お結構だけれど」

「そんな嘘は申上げられません」

「それじゃ止める丈けなら宜いだろう? 機械の都合で然ういうこともあるんだろうから」