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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
「キング」1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页
と私も社長秘書だ。夕刊の黒枠丈けは必ず見て来る。
「然うさ。我輩と同年だよ」
「はゝあ」
「丈夫な男だったがなあ!」
「突然でございましたか?」
「うむ。脳溢血らしい」
「はゝあ」
「矢張り血圧の高い方で、可なり用心していたんだけれど」
「…………」
「我輩ぐらいの年配になると、もう据置期間を経過して抽籤償還ということになっているんだから、いつ番が廻って来るかも知れない」
「今晩は妙に心細いことばかり仰有いますな」
「事実だもの。一週間に一度は必ず葬式がある」
「全く御頻繁でございます」
「残っているものが少ないから当りが多い次第さ。しかし我輩は死ぬのを恐れてこんなことを言うのじゃない」
「はあ」
「生きる方を遺憾なくやって来た以上、死ぬ方も立派にやりたいと考えている」
と社長はひどく陰気な話題を選んだ。私はいつになく淋しい心持になった。ふと蝦蟇の主の鳴く声が耳に入ったので、
「今晩は鳴いていますな」
と方向転換を試みたが、社長は、
「ガマどんかい?」
「はあ」
「彼奴も年だ。我輩同様もうソロ/\死ぬことを考えているのだろう」
といっかな動かない。
「…………」
「君、生れて来た以上は死ぬってことが自然の数だ」