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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

我輩は死んだ人が棺に納まるところを度々見ているが、如何にも楽そうだよ。あれなら遺憾なかろうと思う」

「しかし後のものが困りますよ」

「奥さんに未練が残るかね?」

「私達は社長ほど悟っていません」

「それは年が若いからさ。無理もない。我輩のような独身ものはそこへ行くと楽だ。次に死は来世への解脱なりという考え方がある。我輩はこれでも結構だ」

と社長はそれからそれと説を持ち出して、一晩中死ぬことを話し続けた

自動車で家まで送って貰う途中、私は運転手の杉原に、

「君、社長の宗旨は何だね?」

と訊いて見た。

「さあ、存じませんな」

「仏教のことは分っているけれど、ナカ/\研究しているようだよ。今晩はお説教を聴かされた」

「義太夫と何方です?」

「ハッハヽヽヽ」

「この頃時折牧師さんが見えますよ」

「ふうむ。教会へ出るのかい?」

「いや、お出にはなりません」

「基督教の方へ引っ張られるんだろう? 牧師ってものは見込をつけると根気よくやって来る」

「坊さんも見えますよ」

「ふうむ」

「皆寄附金を取りに来るらしいです」

「成程」

「大将ぐらいになると交際の広いものでございますなあ」

「随分と種々の人が来るだろうね?」