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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

と妻が注意してくれた。

私は早速三好先生を訪れた。手土産の果物籠が嵩張るから円タクで行った。近間へ差しかゝった時、以前その辺を悄然として通ったことを思い出した。門前で下りて玄関へ進むと、先生が一人の男を送り出すところだった。矢張り卒業生らしかった。摺れ違った時、失業者の香がした。以前の自分に行き会ったのかも知れない。

「やあ、珍しいね」

と三好さんは私に気がついた。

「先生」

「又いけなかったのかい?」

「いやその後は御無沙汰致しました」

「不可抗力じゃないかい?」

「先生、今度はもう大丈夫です」

「それなら上り給え」

と先生は請じてくれた。思い出したが、今度失策ったらもう構いつけないという約束だった。

「先生、お蔭さまで大成功です。俸給も二回上りました」

と私は片時も早く偏見を一掃することに努めた。

「ふうむ」

「この十月から社長秘書に抜擢されて、至って都合好くやっています」

「それは結構だった」

「今度こそは大丈夫ですから、お礼に伺いました」

「あゝ、宜かった/\。しかし不思議なものだね。今あの男を送ってこの部屋を出る時、熊野は何うしているだろうと偶然君のことを思い出したよ」