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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

「はゝあ」

「もうソロ/\失策る時分だと思いながら玄関へ出て来たんだが、丁度その頃君は門を潜ったんだね」

と先生は此方が忘れていても、矢張り思っていてくれる。

「恐れ入りました」

と私は覚えず頭が下った。

「そこへ君が顔を出したものだから、あんな失敬なことを言ったんだよ」

「何あに、一向」

「気にかけないでくれ給え」

「私が悪いんです。顔を出す時といえば必ず失策った時ですから」

「それもあるね。いや、それだからさ。ハッハヽヽ」

と三好さんは上機嫌だった。

「先生、これは詰まらないものですけれど」

と私は手土産を押し出した。出世が下手丈けに、斯ういうことは至って不器用だ。

「そんなことをしちゃ困る」

「何でもないんです」

「いや、困るよ」

「先生、これは僕が三十幾つになって漸く一人前の待遇を受けた記念ですから、何うぞ」

「それじゃ有難く頂戴しよう。しかし恐縮だね」

「何う致しまして」

と私は漸く納めて貰って、

「疾うに伺うのでしたが、何分本務の上の兼務で夜まで引っ張られるものですから、毎日天手古舞です」

と社長に信用の篤いところを有りのまゝに物語った。

「それは結構だ」

と先生は一々頷いた。