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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

と令息はその間に原稿を手にした。

「いゝえ、一向」

「父のことですから、さぞ無理な註文を致しましょうな?」

「いゝえ」

と私は否定する外仕方がない。

「これですね?」

「はあ」

「それは未定稿だよ」

と社長が断った所為か、令息は三四枚目を通した丈けで、

「誕生のところですな」

と言って置いてしまった。

「はあ。第一回ですから、何うも外に分別がなかったんです」

と私は社長の顔色を覗った。

「伝記ですもの、生れたところから書くのが当り前ですよ」

「矢張り然うでございましょうな」

「それも事実そのまゝに書かなければいけません」

「はあ」

「誕生で思い出しましたが、父は今こそこんな恰幅をしていますけれど、生れた時は月足らずだったそうです」

「馬鹿なことを言うな」

と社長は反り返った。偉人をもって任じているのだから、月足らずでは具合が悪い。

「いゝえ、私はお母さんから度々承わっています」

「お前のお母さんが俺の生れた時のことを知っているものか」

「お母さんはお祖母さんから伺ったと仰有いましたから確実です」

「ハッハヽヽ」

「何うですか?」

と令息は妙なところへ力瘤を入れる。

「然う証拠が上っていちゃ仕方がない。