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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

とニコ/\笑っていた。

「その頃からもう天意が今日にあったんじゃございませんでしょうか?」

「いや、成功は運だよ。紛れ当りだ。しかし奮闘丈けは遺憾なくしている」

「熊野さん」

と令息が呼んだ。

「はあ」

「父を余り豪くお書きになると、私達が困りますよ」

「決して御迷惑はお掛け申上げません」

「弟も私と同意見で、出版前に一度原稿を拝見したいと言っています」

「俺の自叙伝だ。お前達が彼れ是れ嘴を入れることはない」

と社長は極めつけた。

「丁度好い序ですから、と申しては失礼ですが……」

私は割込んで、

「御令息のお目に映じた社長という題で少しお話を願えませんでしょうか?」

と令息へ申入れた。

「さあ」

「話したら宜かろう」

と社長も言葉を添えてくれた。

「いや、お父さんがそこに然うして坐っていらっしゃると、兎角遠慮があっていけません」

「構わないさ。何でも思い通りを言いなさい」

「又今度のことに致します」

と令息は渋った。

「何故?」

「思い通りを申上げますと、唯今のお約束を帳消しにされます」

「狡い奴だ。ハッハヽヽ」

と社長はそのまゝにした。

「私はもうこれで失礼致します」

「未だ宜いじゃないか?」