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キドこうか

キド効果

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 25 页

青空文庫

3

墜ちた真赤な斑点は、レールとともに飛ぶように後へ走った。

過失? 故意?

二人の武装車掌は、ツと寄って耳打ちをすると強く肯き合った。そして両方に別れると何喰わぬ顔をして、貸切車室の両出口に立ちふさがった。

本部からは既に此の列車へ、例の一味を警戒すべしという電報がきていたし、隧道に入って不思議に電灯が点かなかったこと、そこへ今の惨事が発生したこと、これだけあれば車掌たちの執るべき手段は至極明瞭だった。

果然、列車が興安駅に著くか著かない裡に、早くも警備軍の一隊がドヤドヤと車内に乱入すると、矢庭に全員の自由を拘束してしまった。

3

興安嶺トンネル殺人事件!

丘助手は改めて第一図、第二図、第三図を見直したのだった。

「うふふん。――」

と咳払いをなされた木戸博士は、乾枯らびた色艶のわるい指頭を Fig. 1 に近づけられて扨て仰有った。

「興奮曲線――と名付けるわしの研究じゃ。どうしてこの曲線を画くか。それはZ・F・P誌一九三〇年九月号第三〇頁に出して置いたところで明らかじゃ。要するにそこの隅にある自記装置でこれだけのものが画けるんじゃ。凡そ人間というやつは、興奮の振動体のようなもので、いつも二十四時間、なにかかにかの興奮に神経を焦がしている。