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キドこうか

キド効果

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 25 页

青空文庫

ふたたび列車が、パッと明るい隧道の向うへ脱けいでたときには、四十人の団員が、いつの間にか三十九人になっていた。

ガン、ガン、ガン。

機関車に近い方の扉が自暴に鳴って、やっとそれがガラリと開くと、真赤な顔をした車掌がピストル片手に飛びこんで来た。

「だッだッ誰です。扉を内側から押さえていたのは……。けッけッ怪しからん」

六尺豊かな、まるで角力取のような専務車掌は、湯気のたつような怒り方だった。

ギャング一団は、鬼がお姫様に化けたように取り澄まし、そっぽを向いて知らぬ顔をしていた。

「いま隧道の中で、何か変事があったと後部車掌が報せてきたのに、これじゃ駈けつけることが出来ないじゃないですかッ。もしも重大なる変事だったら……」

「おおい、此処だア」と其の時、一輛後車室の窓から後部車掌が声をかけた。

前部車掌は車室を縦走して、後部車掌のところへ飛んでいった。

「あれを見ろッ」

後部車掌は真青な顔をして、握ったピストルの慄える銃口で指し示した。

「うわッ。――やったナ!」

前部車掌の顔面も、たちまち真蒼に変っていった。

車輛と車輛との間が、鋼鉄車体のところといわず、連結器のところと云わず、真赤な血飛沫がベットリ附着し、下の方へ雫がポタポタと墜ちていた。